土曜日, 11月 19, 2005

ブラックバー道4 “こちら側”の作法

 わが夫Dr.運送屋がバイク免許をとったきっかけは複数あるが、中でも特に影響が大きかったのは、事故のためもうバイクには乗れなくなってしまった元ライダーの、「“こちら 側”においでよ」という言葉だった。“こちら側”というのは、バイク乗りの世界であるらしい。誰が言い始めた言葉かは不明だが、バイクの漫画『キリン』 ではしばしば登場する。ベンリィ家庭裁判所の傍聴者諸兄はすでにご存じの通り、Dr.運送屋は、こういう熱い言葉に非常に弱い。門真試験場の試験官には意 外とやさしい人が多かった、という事は前回述べたが、Dr.運送屋にとって、おそらく一番印象に残ったのは「試験場で も公道でも、常にバイク乗りとしてのプライドを持て」と説いた、熱い中年の男性試験官だろう。そう、夫は大型二輪免許取得後、改めて“こちら側”の世界の 作法を尊重し、崇拝し、大人のバイク乗りたる“正しさ”に再び目覚めたのである。

 “こちら側”の作法の一つに「ケチらない」がある。こ れはわた しが今考えた作法だ。これまで夫は、バイクの整備は自分の手で行っていた。その方が安上が りだし、整備が好きだからだ。この方法は一見すると良さそうなのだが、マメな人間でないと継続できない所が最大の欠点だ。「CD125Tのチェーンがゆ るんで来たなー、変えんなあかんなぁ」との言葉を一ヶ月近く繰りかえす夫にとって、”定期的”とか“継続”とかは困難だ。「やる」と思い立ったらその瞬間 にやるのだが、「やろうかなぁ」の時はやらない。加えて、メンテナンスをする場所が複数ある場合、すべてのメンテナンスが終了する頃には、新たな整備を必 要とする箇所が現れる。エンドレスである。整備する事そのものが楽しいのだから、彼にとってはこれは問題ではなかろう。しかし、いらちなベンリィマダムに とって、彼のこうした行動は、精神衛生上よろしくない。なぜ一発でしゃきーんと直さないのか。

 CBR1100XXの整備に当たって彼は、ついにこの悪癖を改め、お店で一通り整備をしてもらった。以前の彼ならば、「お金がもったいない」「自分でできる」「いつかやる」「そのうちやる」などの理由で、お店で整備してもらう等の発想をしなかっただろう。
  実は、今回譲ってもらったCBR1100XXは、車検が切れていた。一刻も早く車検を受ける為に、早期の整備が必要だった。お店に頼んだのは、そういう 経緯もある。ま、細かい事は置いといて、そのおかげで、免許取得後数週間で、CBR1100XXの公道デビューが叶ったのだった。

  とこ ろで、いつも夫のケツに載せていただいているわたしも、”こちら側”の作法を遵守する必要がありそうだ。とりあえず、2年前に南海部品で買った、銀 色の安っぽいヘルメットを買い換える事から始めようと思う。そして、長期に渡り放置していたCL50「わしのベンリィ号」の自賠責が切れそうなので、多分 今後も乗らないとは思うが、早く更新しよう。この2点だけでも相当な出費なのだが、“こちら側”の作法その1「ケチらない」を作った のは他でもない、わたしなのだ。「もう少しで給料日だから」「あと少しで冬のボーナスだから」とかの言い訳はいけない。これを書いていて、こんな作法など 作らなければよかったと思っている事は、秘密にしておこう…。

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