月曜日, 11月 14, 2005

ブラックバー道その2 門真ブルース

 棚から降ってきたCBR1100XXを、大型二輪免許がないのに買うことにしたわが夫Dr.運送屋。思い立ったが吉日とは夫の為にある諺だ。電話があった直後の6月下旬、夫は門真の免許試験場へ通い始めた。

 「教習所行かへんの?」
  わしのこんな質問は、夫にとっては愚問だった。小型二輪、普通二輪ともに一発試験の道を突き進んできた夫には、「教習所へ行く」という選択肢は微塵もな かった。わたしの場合、「教習所へ行くこと」は「安全を買うこと」に等しいが、夫の場合は「免許を金で買う」事に相当するのだった。もっとも、教習所で大 型免許を取得するには、ものすごくお金がかかる。結局それが、一発免試験選択の一番の理由だった。

 門真の免許試験場は、毎週水曜日と金 曜日にしか大型二輪の試験をしていない。事前審査は、第1、第3木曜のみだ。普通のサラリーマンなら、一発試験は時 間的に無理だろう。ところが、Dr.運送屋は仕事柄、昼間は割と時間が取れる。この事も、彼を一発試験に駆り立てた要因だろう。運転免許試験場での人間模 様は機会を改めて触れるつもりだが、試験場仲間には、サラリーマンをしている人も仕事を休んで来ていたそうだ。

 一発試験、それは世のライダーを魅了する「オトコらしい」生き方なのかも知れん(正直わからん)。

 ともあれ、Dr.運送屋は以降、雨が降っても槍が降っても、門真通いを始める事となったのだった。

  第1回目の試験が終わった日。夫はいつになくしょんぼりとしている。聞くと、以前小型・普通二輪を取得した際に全く問題なかった一本橋で落ちてしまい、 途中で試験中止となってしまった、とのこと。「1回で受かるわけはない」と本人もわかっているはずだが、それでも相当ショックが大きかったらしい。練習し ようにも、その時点でわが家で一番大きなバイクはCD125Tしか無い。

 しばらくすると夫は、「ちょっと練習してくるわ」と言い残し、 家を出た。そう、夫はロータリー式のビジネスバイクでもいいから、とにかく練習しないと、 いてもたってもいられなかったらしい。わが家の近所にある、誰もいない駐車場の白線を一本橋に見立て、何度も何度も練習するわが夫。なんて涙ぐましい努力 なのだろう。

 そんなわが夫の姿を見て、わしは丹下段平の気持ちが少しわかるように思えた。

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